1:MHF部

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1:MHF部

残暑…にも程があるよ、こいつは。 蝉の声が鳴りやまない9月の終盤。 夏休みが終わり、体育祭や文化祭の準備に勤しむ生徒たち。秋の訪れを感じさせる前の、夏最後の抵抗。最高気温36度って…。 ここ池波高校は俳句部が有名で、全国大会を昨年、一昨年と連破してきた。夏休みが明け、三年生が去り、来年の7月大会を目指して新生俳句部が始動し始めていた。 部長は2年C組の児島一星(こじまいっせい)。顔よし、学力よし、スポーツもそこそこよしと、高校生活を送るに何不自由をしないであろうことが周りから見ても分かるような、そんな男子生徒だ。 副部長は2年B組の佐々木美保(ささきみほ)。素朴で自然な可愛らしい見た目と、鮮やかな黒髪をショートカットに刈り上げた活発さがウリの女子生徒だ。 校舎の二階にある畳敷きの部屋が、彼らの部活動の拠点で、30畳ほどの広さの3分の2ほどを使用していた。そしてそのスペースに30名近い部員がひしめき合っていた。 残り3分の1は茶道部と華道部が細々と使っていたが、部活同士の仲は大変良かった。 今日も校舎の二階の窓から、大きな声で俳句を詠む声が聞こえてきた。 「~古池や 蛙飛び込む 水の音~」 そんな声をBGMに、校舎の下でたむろする3人がいた。 「頼む!よさのと、ここで必殺技を!」 「って、ちょっとまってよ!まだチャージしてないって!まっつん攻撃するの早いよ~」 「てかお前ら二人、ソーローか?何でもかんでも早いのがいいってわけじゃないぞ!」 「かお、おまえほんっと何でもかんでも下ネタにつなげるなぁ。感心するよ。」 「んじゃ、回復しとくから、次のターン頼むな!」 「おうよ!」 三人の名は松尾和樹(まつおかずき)、与謝野俊哉(よさのとしや)、小林香(こばやしかおる)。3人とも2年A組の生徒で特に部活動に入らず、いつもこのメンバーでたむろしていた。めんどくさい事が嫌いで、放課後は三人で集まって何かしら良からぬ事をたくらむか、ゲームをするか、スーパーマーケットの前の出張焼鳥屋のオヤジと話すくらいの事しかしていなかった。 だからと言って友達がいないわけではなく、三人とも周りからは比較的好かれており、休み時間などはそれぞれが、それぞれの友人たちと遊ぶことの方が多かった。 和樹は友達から「まっつん」と呼ばれている明るいキャラが特徴の短髪の男子生徒でムードメーカー一歩手前の立ち位置。中学の頃はサッカー部に所属していた。 俊哉は「よさのと」と呼ばれる分析屋で学力も学年で5本の指に入る優秀な生徒だった。 香は「かお」と呼ばれ、のんびりとした性格だが、いつもエロい事ばかりを考えていた。
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