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アイスクリームがたゆんとメロンソーダに浮かんでいる姿を見て完成だと満足していると、女性店員が「あっ」と呟いて厨房へと再び消えていった。
戻ってきた女性店員は白い小皿を机の上にそっと置いた。小皿の上には真っ赤な桜桃が乗っていた。
「それがなくちゃ締まらないっしょ」
女性店員が得意気に、早く桜桃を乗せてと子供のように急かしてくる。私はそれを宥めながら、アイスクリームの上にそっと桜桃を乗せる。するとクリームソーダの存在感が一気に際立ち、桜桃が無くてはならない存在のように感じられた。
「出来たね」
私は女性店員の言葉で今度こそ完成だと認識すると、先程よりも強い満足感を覚えた。上着のポケットからスマートフォンを取り出し、カメラを起動してクリームソーダが美味しく見えそうな位置を探して写真を撮る。そしてそれをSNSにあげると、直ぐにいいねが付いた。誰がいいねしてくれたのかなと確認すると、よくSNS上で仲良くしている人物だった。特に返信がある訳では無いが、今の気持ちを共有出来たようで嬉しい。
「それじゃ飲もうか」
私は手渡されたストローを受け取り、紙の封を破って中に入っている赤いストローを取り出した。
それをクリームソーダに突き刺し、柔らかく唇を当てて吸い込む。
その味はやっぱり懐かしい味がした。
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