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翌朝、5時に起きて半には出発した。
玄関を閉める時、大欠伸する紫貴に聞く。
「もしかして……眠れなかった?」
寝相が悪かったんだ…という心配をする。
昨夜はどちらも譲らず、時間が勿体ないという事で一緒にベッドに入った。
壁側に横になった蓮華は、壁とお友達の如く、ぺったりと張り付いた。
紫貴は落ちるんじゃないの?と思う程、端に寝ていた。
それを少し見て、蓮華は後悔をする。
あんな体制で寝ていて眠れる訳もないし、体も休まらない。
壁から離れて紫貴の方を向き、背中越しに話しかける。
「あの……ね?紫貴。いくら何でもそれ…休まらないと思うの。」
背中から聞こえた声に紫貴も振り向いて、体を反転させた。
それでも二人の間には20センチほどの隙間がある。
お互いに目一杯、端に寝ているからだ。
「蓮華が横にいたら気持ちが休まらないですよ?」
笑顔で言う紫貴に頬を膨らませる。
「じゃあ、下で寝る。」
上半身を起こすと紫貴も慌てて起こす。
「蓮華!多分、蓮華の思ってる意味と違います。蓮華が下に寝るなら僕が寝ます。」
「だから!それは嫌だってば!!」
降りようとする紫貴のシャツの背中部分を引っ張り、
「思ってる意味と違うってどういう意味?私は紫貴にぐっすり寝て体を休めて欲しいの!」
必死に言うと紫貴は赤い顔をして口元を押さえていた。
「あのね?蓮華はどうか分からないけど、僕はあの夜の記憶は朧げで正直に言えば覚えてないの残念だなぁ、位に思っているんです。」
「あの夜?」
意味不明な言葉にいつの夜だ?と思いながら数秒考えて、顔に火がついた。
「あ……あの、よ…る?」
動揺する蓮華を見て困った様に笑い、ギュッと抱き締めた。
「何もしないです。ただ…ドキドキして蓮華が横で寝ていると思うと、ドキドキし過ぎて、眠れる気がしないだけです。そういう意味の気持ちが休まらない、ですよ?」
「……それじゃあ、駄目じゃない?あ、私車に行こうか?」
「蓮華!」
怒られてしゅんとする。
「だって…ちゃんと寝て欲しい。」
それを見て紫貴はくすりと笑い、蓮華の手を取った。
「手を繋いで向かい合わせで寝ましょうか?離れて寝ても不自然ですよね?こうしていてもお互い譲る気はない訳ですし、眠る時間がなくなるだけです。一緒にパタンと横になりましょうか…何も考えずに。」
「何も…考えずに?」
「はい。手を繋いで、パタン。」
左手を繋いだまま、残った紫貴の手に肩を押されて横向きにパタンと、横になった。
少し距離が近付いたけど、恥ずかしくはなかった。
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