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プロローグ
肩下10センチの少しくせ毛の黒髪を振り乱しながら、素早く冷静に静かに、部屋の中を女が動いていた。
身長は153センチ、痩せた細身の体で、小さな体をさらに小さくして、足音をさせない様に爪先で歩き回っていた。
シングルベッドの上には気持ち良さそうにすやすやと寝息を立てる美しい男がいる。
すやすや、と言うよりは少しイビキの様な音も聴こえるが、黒髪サラサラストレートに高身長、細マッチョな割れた腹筋の見惚れてしまいそうな美麗な男には、イビキは似合わないから聞かない振りをした。
美しい男のうつ寝返りを、停止してドキドキしながらそっと様子を見て、女はまた動き出す。
部屋から出て隣の部屋に行き、また戻る。
そして全ての作業を終えて男を見た。
全裸に毛布を巻き寝ているが、汗や汚れはどうしようかと考えた。
触ると起きそうだし、中途半端に手を出して拭くよりは一人でやったと考えた方がいいだろうと結論を出し、放置の方向で…と部屋を静かに出た。
(証拠隠滅!!)
証拠隠滅と隠滅の為の小細工を終えて、女は満足気に自分の部屋に戻り内鍵を掛けた。
天国と地獄の一夜を超えて、ここからは一人だと決意を新たにして、その場にズルズルと座り込み、声を殺して泣き始めた。
冬の朝は暗く、時計はまだ4時を過ぎた所だった。
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