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「たかくん、待って」
JR新宿駅南口改札前で"彼氏”を呼び止める。
ただ、彼は私の声を無視してICカードで駅の改札機を通る。
私も1拍遅れて隣の改札機から入り、彼の横から声をかける。
「ねぇ、少し話し合おうよ」
はぁっとため息をつきながらこちらをチラリと見る。
「別れようってどういうこと?」
彼の歩幅に合わせようと小走りになりながら、訊く。
彼はまだ歩みを止めようとしない。
とにかく話をしたくて、彼の腕を掴む。
「理由を聞かなきゃ納得できないっ」
ようやく彼は止まってくれ、もう一度ため息をつき呆れた様子で見下ろす。
優しい彼が初めて私に何の興味もなく、うんざりしたような顔をしている。
「じゃあ少しだけそこの店に入って話そうか」
立ち飲み専門のコーヒー店を指差す。
お店のチョイスからして早く話をつけたいとの気持ちが分かるが、私はそれ以上に必死で、その提案に対して即座に頷いた。
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