再会

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1台の黒い普通車が時速30キロの道を法定速度通りにゆったりと走っている。 見渡す限りの田んぼや畑が広がっている。 道幅は対向車が来たらすれ違うのが難しいくらい狭いが、 お昼すぎのためかここ30分は他の自動車と出会っていない。 「あとどのくらいでおばあちゃんの家に着きそう?」 助手席の母が運転席にいる父に訊ねる。 「そうだなぁ…、あと20分くらいかな?」 父はニコニコしながら答えているが、東京の自宅からここまで5時間以上もかかっている。実家に行くのが楽しみなのかもしれない。 (面倒くさいし遠いな・・・。) 私は窓から外の景色を眺めつつため息を吐いた。 車の中からは外に陽炎が見え、車から1歩でも出たらうだるような暑さなのだろうと想像でき、またもう1つため息が出る。 「美月、おばあちゃんの家に行くの楽しみね」 母がこちらに振り返りながらのんびりした口調で言う。 父も、こっちに来るのは美月が小学生の時以来初めてだよなーと懐かしそうにつぶやいた。
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