ℱの音色

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美和子──遼の母は玄関先で若菜を見送り、リビングに戻った。 若菜から受け取ったフルートケースをそっと開ける。 「……これでよかったのね? 遼」 独り言のように呟くと、傍らに音もなく息子の姿が現れた。 『うん。ありがとう──お母さん』 殊勝な息子に苦笑する。 (あの子がそばにいれば、遼も寂しくないんじゃないかって思ったんだけどね……) 結局は親の勝手なエゴにすぎなかったということなのだろう。 まるでその通りだと言わんばかりのタイミングで、フルートケースがぱたりと音を立てて閉まった。 -END-
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