ℱの音色

1/37
前へ
/37ページ
次へ

ℱの音色

遠い昔のようでいて、つい昨日のようにも思える。 でも本当は、五年という年月が経ったのだ──遼がいなくなったあの日から。 今だって、目を閉じればあの銀色に輝く華奢な楽器が真っ先に浮かぶ。 その上で踊る指は私のもの? それとも──…? 私は静かに目を開けた。遼はもういない。 逝ってしまったのだ──私と、このフルートを置いて。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加