ℱの音色

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屋上庭園はひっそりと静まり返っていた。 人工芝と石のタイルが敷き詰められた地面を、まばらにある電灯が照らしている。 出入口には鍵がかかっていないようだった。 そっと力を込めると、ガラス扉が音もなく開く。 「──遼?」 なんとなく、ここなら遼に会える気がしたのだ。 誰もいなくて、空にも近いこの場所でなら。 私には霊感なんてないし、亡くなった人と話ができたこともない。 でも肌でわかった──遼は近くにいる。
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