ℱの音色

23/37
前へ
/37ページ
次へ
しばらく動かずにいると、ふいに頬に風を感じた。 まるで何かに呼ばれたような気がして顔を向けると、そこに遼がいた。 透き通ってもいなければ、足が消えてもいない──生身の人間となんら変わりない姿だった。 一瞬、本当に生きているのかと思ってしまったほどだ。 周りの全てが大掛かりなお芝居で、実は遼は死んでなんかいなかったんじゃないか、と。 でもそんな淡い期待は、次の瞬間に打ち砕かれた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加