ℱの音色
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《あんな怪我──じゃないんだよ》 そう言って遼は悲しそうに目を伏せた。 「だって、普通に生活する分には支障ないって……」 遼自身がそう言っていたはずだ。 けれど遼は首を振る。 《曲げたいときに曲げられない。もうフルートは吹けなかったんだ》 やはりそれが直接の理由だったのだ。 私は悔しさのあまり唇をかむ。 「だからって……」 死んでしまうことはなかったはずなのだ。
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