ℱの音色

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《若菜。僕はね、そっちの世界で吹けなくなったから、こっちの世界に来ただけなんだよ》 遼の言葉に、私は思わず首を傾げる。 「そっち」の世界? 「こっち」の世界? 一体何を言っているのだろう。 《僕はこっちの世界で吹き続けてるんだ──ほら》 そう言って遼は両手を顔の位置まで持ち上げ、フルートの構えを作った。 するとそこに、銀色に輝く楽器が現れる。
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