ℱの音色
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(わあ……!) 思わず見とれてしまった。 けれど遼はそのフルートを吹き始めることはしない。 《生きるとか死ぬとかじゃない。ただ、世界が違うだけなんだよ》 静かにそう言って、遼はフルートを差し出した。 《若菜。……あの約束、覚えてる?》 「──!」 きっと、あの約束のことだ。 私もコンクールで優勝できたときには、一緒にコンサートをしようという、遠い日の約束。
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