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「──これ、本当にごめんなさい」
お詫びのしようもない。
けれど他にどうすることもできなくて、私は遼のお母さんに頭を下げた。
事情はどうあれ、息子の形見同然のフルートに傷をつけてしまったのだ。
「……無事でよかったわ」
遼のお母さんが静かに言う。
聞き間違いかと思って、私はつい「え?」と声を上げた。
「……無事に終わってよかった、って言ったの。傷のことは、職人さんに任せるから気にしないで」
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