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4月16日
エドガーは無傷だったし、コップの水さえこぼれていないのだ。危険はあるまい。そう判断し、私は金庫に入ってみることにした。秘書に1泊2日の架空の出張をでっち上げさせ、2日分の携帯食とミネラルウォーターを入れた鞄を準備した。
***
ホーカー氏の日記はここで終わっている。もしこの日記を、あの日の前に読んでいたなら、このような悲劇は起こらなかっただろう。
4月17日、ホーカー氏が出張に行った翌日、リンダ夫人から電話があった。氏の注文したスタインウェイのアップライトピアノを地下に搬入したいのだが、書斎の鍵が閉まっていると。私がまだ合鍵を持っているのなら、貸してほしいとのことだった。
私は夫人と地下に下りた。夫人は書斎を見回すと、ピアノを部屋の隅に置くよう指示した。もちろん、そこには隠し金庫があるのだが、そのことはホーカー氏と私だけの秘密である。夫人に打ち明けて、ピアノを別の場所に置くように言うことはできなかった。ホーカー氏が出張から戻った際に、氏がピアノの場所を変えさせればいいことだった。
ただ、すでに氏の持ち物が金庫に保管されているかもしれない。そこで、夫人が1階に上がったすきに、こっそり中を確認した。金庫の中には何もなかった。私は扉を元どおりに閉めた。そしてなにくわぬ顔で、運搬業者にピアノを隅にぴったりと置くように指示した。
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