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木々に囲まれた不気味そうな沼には水面には時々ぶくぶくと泡が出てきていた。清武はこれはカエルが顔を出していると話した。
「良いですか?それでは網を張ります。ピンと張りますよ」
ちゃんと許可をもらっている彼らは網ですくい一網打尽を狙ったが、なんとカエルは一匹もかからなかった。
「おかしいな」
「魚やザリガニばかりですな」
首をひねる彼らに画像を撮っていた沙也加は、あ!と声を発した。
「どうしたの沙也加さん」
「先生。カエルはこの網を抜けています」
「こんな細かいのに?」
用意した網をカエルは通り抜けているという沙也加の目撃であったが一同はそんなことないと笑った。
「……でも可能性はあるね。どれ」
清武は先に仕掛けた罠を確認すると二匹だけ入っていた。このカエルで実験したところ確かにカエルはすり抜けてしまった。
「本当だ」
「大きな体なのに」
「体の表面の粘膜とか、それ以前に関節が柔らかいのかもな。これは新発見だな……」
この日はこの網しか用意していないので作業は罠を仕掛けるだけで終わってしまった。肩透かしの二人は早めに現場から帰ってきた。
「なんかさ、早く終わったから、なんか食べて帰ろうか」
「そうですね。あのお蕎麦屋さんに入りましょうか」
汚れた服は着替えていた二人は昼前の蕎麦屋の小上がりに上がっていた。
「先生は何にします?」
「そーだね。沙也加さんは」
「私はざる蕎麦が、あ!先生。見て」
そこには鮎の塩焼きとお勧めメニューがあった。
「いいね。お蕎麦もあれも食べよう。すいませーん」
こうして二人は料理ができるまで話をしていた。
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