続・死神ゴルフ

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「棄権は試合放棄とみなし、対戦相手の勝利となります」  それは棄権した者の負けを意味する。つまり死ぬということだ。 「そんな……」と中年男は広い額に手を当てた。それからギロリと俺を睨む。 「そもそもあんたが悪いんだからな。あんたが素振りなんかしなければ、私はゴルフのことなんか考えもしなかったんだ」  掴みかかろうとする中年男と俺の間に二人の少年が割って入る。 「まあまあ落ち着きなっておっさん。大人気ないよ」 「そうだよ。こっちのおじさんだって別にわざと素振りをしたわけじゃないし」  いや、わざとなんだけどと思ったが口には出さない。  中年男は子供に窘められたことが気に食わないのか、 「うるさい。ガキの癖に生意気な」 「なにキレてんだよ、このハゲ」 「なんだと?」  興奮した中年男が金髪少年を睨みつけた。その横から眼鏡君が冷ややかに口を挟む。 「そんなすぐにカッカするから毛も抜けるんじゃないの?」 「お前ら大人を馬鹿にするのもいい加減にしろ」 「バカになんかしてないじゃん」 「そうだよ。事実を言っただけだもん」 「そうそう。実際ハゲてるし」  プッと吹き出した二人を前に中年男の顔が紅潮してくるのがわかった。  まずい。この年代の男が本気でキレたらたちが悪いと言うことは俺の人生経験から得た教訓だ。 「あの、ちょっと」  両手を挙げてこちらに意識を向けさせると、 「あれこれと遺恨はあるだろうが、ここは一つゴルフを再開させないか。このゲームでその遺恨を晴らすってのはどうだ?」  フンと鼻息を荒げた中年男が、いいだろうと言って矛先を収めた。少年たちはその様子を見て小ばかにしたようにくすりと笑ったが、男は気づいていないようだった。 「では、よろしいですか?」  ようやく死神が口を開く。 「今回は参加者が4人ですので、対戦形式はストロークプレイとさせていただきます」  それはもっともなじみのある競技方法だ。18ホールを回り、総打数の一番少ないプレイヤーの勝利となる。各ホールには規定打数があり、それを1打上回ると+1(ワンオーバー)、下回ると-1(ワンアンダー)と表記される。この数が少なければ少ないほどいいということだ。  死神は中年男を一瞥してから、 「こちらの男性がすでに第一打を打たれましたので、次はどなたが?」
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