続・死神ゴルフ

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「はい」と進み出たのは金髪少年だ。  子供にゴルフができるのかと怪しんだが、予想に反して綺麗なスイング。それに見事なショットだった。 「おいお前、ゴルフやったことあるのか?」 「バーチャルの世界でちょっとだけね」  ゴーグルを付けてあれやこれやするゲームのことだろうが、俺には無縁の世界だ。リアルで生きるのに精一杯なのに仮想現実なんてやってられるか。  次に眼鏡君が打った。ナイスショットと金髪少年が褒める。  最後に俺の番だ。一度経験しているだけに楽なものだ。と思っていたがあの時とは体調が違った。ショットの瞬間、胃に痛みが走った。そのせいで少しだけ球がスライスしてしまった。まあ今回はストロークプレイだ。取り返すチャンスはまだある。    1番ホールは駅構内。これは前回と同じだ。しかし次からは違った。2番ホールは駅地下グルメ街。3番ホールはパチンコ店だった。その間のスコアはそれぞれ一進一退で、中年男が一打差でトップに立っただけ。あとは横並びだ。  次のホールへと移動する道すがら、少年たちが話しかけてきた。 「おじさん、見た感じこのゴルフ初めてじゃないっぽいよね」 「ああ。二回目だ」 「どうして二回もするの?そんなに長生きしたい?」 「違うよ」と応じてから、前回の顛末を話してやった。すると二人ともが同情とも嘲笑とも取れる表情を浮かべ、 「うわ。それサイアク」 「だから時々どこか痛そうな顔するんだ」 「そういうことだ。じゃあ逆に訊くが、お前ら幾つだ?」 「15」 「中学生が、なんだってこんなゴルフをやる」  二人はヘヘッと笑い合ってから、これ、と言って眼鏡君の眼鏡を指差した。 「カメラが内臓されてるんだ」 「こいつでゴルフの様子を撮影して、動画サイトにアップするんだよ」 「死神ゴルフ、やってみた。ってね」 「おいおい。お前らユーチューバーかよ」 「まあね」と金髪少年。 「それにしたって命掛けることないだろ。わかってるのか?負けたら死ぬんだぞ」 「もちろんさ。なあ」と眼鏡君が金髪少年を見る。 「そうそう。こんな世の中じゃ長生きしたってろくなことないし、死んだら死んだでそのほうがいっそ楽じゃん」  呆れた。こいつら本当に死というものを理解しているのだろうか。と偉そうに言ったところで俺だって似たようなものだ。こうして死に直面して初めてじたばたともがいているのだから。
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