20人が本棚に入れています
本棚に追加
欲望を制御すること。それは『自我』をもち、後悔しない、考えることを放棄しないようにするための、あたしがあたしに課した試練。
林城あやめは来年から、高校生になる。
まだ15歳の彼女。これからの人生でもっと過酷で様々な試練が待ち受けている。
受験、就職、恋、譲れない意志。高校生、大学生、社会人となるにつれ、様々な誘惑や戦いに打ち勝っていかなくてはならない場面は多々あるだろう。
だが──
「ねえ津村。忖度なしで答えて。あなたの人生で最も手ごわい相手はなんだった?」
津村は言葉の真意を受け取め少し考えてから「あやめお嬢様の試練を制作してほしいという、お題でございます」と答えた。
「忖度なしって言ったのに」
ふふっと笑う。あたしが欲望(desire)に打ち勝つための試練を考えてってお題は、津村にとって大いに頭を悩ませる課題だったようだ。
津村の指定した課題をクリアできなくても、あたしは実家に帰ることになっていた。
だけど自分の意思でそれを選ぶのはともかく、『理由』にはしたくない。
あたしがこの試練で自分に課したこと。それは『勝つ』ことだった。
そう──これは負けられない戦い。相手はケーキの誘惑でも猫の誘惑でも故郷の両親の誘惑でもない。
大切なのは強い意志。そして、自分自身に勝つことよ。
最初のコメントを投稿しよう!