負けられない戦い

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「ベッドに入られて睡眠が確認されてから、スタートとなります」 「一時間寝ないで頑張るのはダメ?」 「走り続けることもご立派ですが、時には足を止め、休息も必要です」 「分かってる。ありがとう。でも一時間以上寝ちゃったら、私の『負け』でしょ」 「……」  男は返事をしないが、何か言いたそうな困ったような複雑な顔をした。 「アラームはセットする。これは正当な理由だからルール違反にはならないでしょ?」 「勿論です。ただ起こしたりアラームを止めることはありませんご了承を」 「分かってるわ」  ベッドの前に立ち躊躇(ちゅうちょ)する。疲労した脳と体は休めと訴えるけど本能が警告する。  ここで寝ちゃったら起きられる自信がない。  だけど休まなきゃ次に進めないし、次に進むためにあたしは休む。  ベッドに入ると、ずっしりと体が重く感じた。  疲労と寝不足。さらに負けられない緊張感からか、体が重力を感じていた。 (ヤバい……かも)  すぐに瞼が重くなってきた。  意識が混濁する。眠りに入る直前の、曖昧な意識の状態になる。 (あたしは今なんでこんなに頑張っているんだっけ?)  もうよくない?  まだまだまだまだこれから、人生長いんだし──明日から本気だせばいいじゃない。    ああ、気持ちいい。堕ちていく。  眠りの感情って何に分類されるんだっけ? えっと……そっか快感ね。
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