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黒と白の扉。中間にスペースを空けて設置されており、そこにスーツの男が立っていた。時計を掲示されていないので、時間制限はないからじっくり選べという意味だろう。
「……一応聞くけど白い扉の鍵は?」
「ありません」
男は淡々と答えた。
私は「そう」とだけ答えて黒い扉の前に立つ。
大きく深呼吸。試練もこれで終わり。迷いはないといえば嘘になるけれど……ううん、きっと後悔はしない。
私は意を決して、新幹線のチケットを破った。
男は目を見開き驚いた様子だが、構わず振り向いて、黒い鍵を放り投げる。
呆気にとられる男の前に立つ「白の扉、鍵はないんでしょ? 開いてるってことでいい?」と確認した。
「宜しいのですか? お嬢様」
「鍵は?」
「かかっておりません」
「ありがとう」
確認の後、白い扉を開ける。外だ。
「……ふぅ」
12月の風は冷たく体の芯から凍えそうになるけれど、待機していたリムジンは発車準備ができていた。
続けて建物から出たスーツの男が後部座席の扉をあけ、あたしはそこに乗り込む。男は運転席に乗り込み、車は出発した。
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