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雨が小降りになったので、ゴミ袋を雨除けがわりに、チュッパが務めているヌードルショップに行く。
すれ違う普通市民たちが俺を避けるように歩く。みな傘をさして、普通市民であることを示すバッジを胸につけている。
チュッパの店は大通りからは見えない路地の奥にあって、俺たちのような下級市民がたまり場にするような、油染みの浮いた店だった。
俺は店の裏手にある厨房用の勝手口のドアをノックした。アルバイトらしき下級市民の女の子が、揚げ油で汚れた顔を出す。
「何?誰?」イライラした口調で聞く。
「店長いる?」ドスの効いた声でにらむ。
「誰?店長忙しい」
「友達が来てると伝えてくれ」
「あなた、店長の友達?」
「ああ、大親友だ。おなじ…ところで育った」
大親友って何かね。金に困ってるやつに大親友はいない。いるのは大恩人だ。
「本当?ウソだったら私、怒られる。怒られると私、普通市民になれない。家族が困る」
俺は今困ってるんだ。お前の家族よりも俺の方が優先だ。それにチュッパは俺の頼みを多分断らないだろう。
「本当だ。お前が怒られることにはならない。むしろなんとかポイントが多くもらえるチャンスかもしれない」
そういうと女の子は俺の言うことを信じ切ったみたいで、急いでチュッパを呼びに行った。
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