Immigrant Song

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 俺はシーチャを助けおこし、また階段に座らせてやった。俺もその隣に腰をおろし、不自然に明るい青い空を、時々低空を飛ぶ無人飛行機を見ていた。 「ジージ…なんもねえ…なんも見えねえ…」  シーチャが首を垂れて、ツバを吐く。 「メシを食え。頭を使え。シーチャ。俺たち下級市民にも、少しぐらいの知恵はある。ええ」 「お前は若いし、女もいる、オーレはなんもねえ」 「そんなの関係ねえ。なんもねえなら、作り出せ。心の中を耕して、大根でも植えろ。クソみたいな酒で、おっ死んでもだれもなにも、気にしてくれねえんだから」  俺はポケットに入っていたミルク飴をシーチャに手渡した。 「なんだ?これ?」  シーチャは飴を目の前に持ってきて、ゴミでもついてるんじゃねえかと思うぐらい観察した。 「ただの飴だ。ミルク味だ。ミルク飲んだことあるだろう?ええ」 「ああ、たぶん。ある。大昔だ。白いやつだろ」 「そうだ。クソ女のケツみたいに真っ白な飲みもんだ。普通市民はセックスしねえ代わりに、飴をなめてる。栄養があるんだとよ」  この間きた、なんとかっていう普通市民の女が一袋忘れて置いてった。なんて名前の女だっけ。  シーチャは飴を口の中に放り込んだ。 「こりゃ、固えな。ハーがねえから、食えねえ」  手のひらの上に吐き出した。 「バカ。そいつは噛むもんじゃない。なめてりゃいいんだ。そういうもんだ」 「めんどーくせえ…なあ…ミルクってのは。ヨーヨー」  もう一度、口の中に放り込んだ。歯のねえシーチャはしばらく口の中で転がしていた。 「どうだ?シーチャ?ミルク飴は?」 「なくなってきたら、さみしーいもんだ」  おめえもその女と友達になればいい。 「その女は友達を募集してるって言ってた」 「オーレが女と友達?無理に決まってら」 「いや、別に女に何かするわけじゃねえ。その女はなんとか運動っていうのを立ち上げようとして動いているって言ってた」  キスもそこそに、俺にその運動に参加しないかと熱心に誘われた。俺はいつものラジオが聴きたかったので、適当に返事をして追い返したんだった。 「運動?俺が?100メートルも走ったら死んじゃうぜ」 「その運動じゃねえと思う。たぶんだけどな。何人か集まって、あーだこーだおしゃべりするやつだろう、知らねえけど」 「行くのか?」  シーチャが聞いた時、無人飛行艇が一機近づいてきた。やべぇ、と思って二人とも口をつぐんで押し黙った。
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