お忍び

3/4
266人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 私は、ネックレスを掛ける。 重っ!! これ、一日中してたら、絶対に肩が凝るやつ。 この勾玉、ガラスの塊だもん。当たり前だよね。 それでも、大王が差し出す鏡で、自分の確認しようとしたけど、この暗がりじゃ、当然、何も映らない。 「姫、こちらへ」 大王は私の手を取り、月明かりの縁側へと連れ出した。 寒っ!! 多分、太陽暦では、今はもう11月くらいだと思う。時刻は、そろそろ亥の刻、10時くらい。寒いはずよ。 それでも、ガラスは微かな月明かりを反射して、小さな煌めきを放った。 「やはりよく似合う。  このように大きくて透き通った玻璃(はり)は  見たことないであろう?」 いやいや、 そもそもこれ、私と一緒に来たガラスだし。 大王はそんな私の思いに気付くことなく、得意げに話し、鏡を私に手渡した。 重っ!! ネックレスより、こっちの方が何倍も重い。 たかが鏡なんだけど、裏に張り付いてるのは、銅の塊なんだもん。 だけど、そんなことを言えるはずもなく、私は曖昧に笑ってごまかした。  その次の瞬間、大王は、両手に大きな鏡を抱えたままの私を鏡ごと抱き寄せた。 やだっ! 大王の腕から抜け出そうとするけれど、両手は重い鏡で塞がっている。 「あの!! 大王!?」 「姫、どうか一緒に来て欲しい。  姫さえいれば、私はこの先、どんな苦難も  乗り越え、改革を推し進めることができる」 頭上から響く低い声。 どうしよう。 どう断ればいい? 私は大王の腕の中で、考えを巡らせる。 「いえ、私は参れません。  私は、この世界の人間ではないんです。  そのお気持ちだけで十分です。  どうか他の方を……」 ん? あれ? って、大王って独身? そんなわけないよね? 絶対、皇太子もいるでしょ!? そんなことを思った、その時、ズンッと下から大きく突き上げられた。 な、何!?
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!