今は昔竹取の翁という者ありけり

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「あの……」 「なんじゃ?」 おじいさんが振り返る。 「つかぬことをお聞きしますが、今は、  何年ですか?」 「何がじゃ?」 「えっと、西暦……じゃなくて……  えっと、元号は何ですか?」 「元号?  はて、ばあさん、元号って知っとるか?」 「さてねぇ。お姫さまは、  何をお聞きになりたいんじゃろ?」 2人から見つめられて、困った。元号が通じない? ここは日本じゃないの? ううん、日本語、通じてるもん。日本のはず。 そうだ! 「天皇陛下は、どなたですか?」 「天皇? また、分からぬ事ばかり言われる  お姫さまじゃ。天皇とは、なんじゃ?」 ええ!? 天皇が通じないの? なんで!? 「天皇っていうのは、えっと、帝? 王様?」 「あぁ?  もしかして、大王(おおきみ)のことかえ?」 「っ! それっ! 大王!  って、今、どなたですか?」 おじいさんは、不思議そうな顔をしながらも教えてくれた。 「そりゃあ、先の戦の後からは、大海人皇子(おおしあまのみこ)  さまじゃよ。都も近江から飛鳥浄御原(あすかきよみがはら)に  お戻しになって、それはそれは立派な  大王さまじゃよ」 あぁ、やっぱり…… 大海人皇子が誰なのかはよく分からないけど、少なくとも私が知ってる今上陛下でないことは、確かだわ。 となると、大海人皇子が誰なのかってことよね? 何天皇になる人なのかしら。 「では、その前の大王さまは、どなた?」 「大友皇子さまじゃよ。近江に移られてからの  ことは、よくは分からぬが、まだお若い  盛りであったろうにおいたわしい」 ん? 近江?  そうか! さっき、近江から飛鳥に都を戻したって言ってたよね? つまり、これ、飛鳥時代ってこと? でも、飛鳥時代に都って近江にあったっけ? 近江って、確か、滋賀県だよね?
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