271人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
つまり、私は、あの地震のせいで、何故か飛鳥時代にいるってこと?
もう、正輝さんには永遠に会えないの?
そんなのやだ……
正輝さんに会いたいよ。
正輝さん……
私は、あふれる涙を止められなかった。
「お姫さん、どうしたんじゃ?
わしらが、ちゃーんと、お姫さんのお屋敷まで
送り届けるで、そう、泣かんと……」
おじいさんがうろたえながら、慰めてくれる。
「まぁまぁ、とりあえず、中にお入りなされ。
ゆっくり聞けばええじゃろ」
おばあさんは、優しく私の背をさすってくれた。
私は奥に通され、おばあさんに促されるまま、床に腰を下ろした。
「それで、お姫さまは、
なんぞ覚えとらんのかね?
村の名前とか、お屋敷の名前とか……」
私は首を振る。
「私には、帰る家などないのです」
それだけ言うのが精一杯だった。
それを聞いたおじいさんは、一瞬、驚いたように目を見開いたものの、うんうんと大きく頷いて、
「なら、ここにおったら、ええ。
ここには、わしら2人しかおらんで、
遠慮も要らん」
と言ってくれた。
おばあさんも、即座にそれに同意してくれたので、私はしばらくの間、この家でお世話になることになった。
最初のコメントを投稿しよう!