管弦の宴

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 そんなことを思っていると、また別の男性が(きざはし)を上ってくる。 「初めてお目にかかります。  私、大納言(だいなごん)大伴御行(おおとものみゆき)と申します。  美しいと噂に名高いかぐや姫を前に、  胸の内が打ち震えております。  姫は私が必ずお幸せに致します。  どうか、  私の妻になっていただけませんか?」 何これ? 今日は、管弦の宴じゃなかったの? 何の罰ゲームよ。 大納言さんはさっきの右大臣さんよりは若く見えるものの、それでもどう見てもアラフォー。 まぁ、アラフォーにしては、背筋もしゃんと伸びててかっこいいおじさま風ではあるけど、それでも、正輝さんじゃない人は、誰が何と言おうと、ダメなものはダメ! おばあさんが、 「お姫さま……」 と声を掛けてくるが、私は即座に首を横に振った。 ないから! 誰が来たって、結婚はないから! 「申し訳ございません。  姫は、大納言さまのもったいない仰せに、  言葉を失っております。  また、日を改めて……」 いやいや、もったいなくて言葉を失ったんじゃないから! おばあさん、言葉をオブラートに包みすぎ!! すると、また入れ替わるように、別の男性。 もう、やだ!! 何でよ。 私はかぐや姫じゃないし、天照(あまてらす)でも月讀(つくよみ)でもないわよ。 どうしてそんな変な噂が流れるのよ。 絶対、あのドレスのせいだし。 キラキラしてたのは、服だけで、私は普通の人間だし。 「はじめまして、かぐや姫。  右大臣阿部御主人(あべのみうし)と申します」 ええ!? 今度は右大臣!? この国は、いったい、どうなってるのよ!? この人、さっきの左大臣よりは若そうだけど、お父さんより少し年上のアラフィフって感じ。 この国、今、大変な時期なんじゃないの? 偉い人がみんなこんなにスケコマシだなんて。 私なんて、絶対あなたの娘より年下でしょ? なんなら、孫と同世代なんじゃないの? みんな十代で結婚出産するんでしょ? 私は、右大臣がそれ以上何か言う前に、おばあさんに断ってもらった。
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