管弦の宴

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 管弦の宴っていうから、すっごく楽しみにしてたのに、何これ!? しかし、これだけでは、終わらない。 「中納言(ちゅうなごん)石上麻呂(いそのかみまろ)と申します」 今度は、中納言…… そもそも、大納言とか中納言って、偉いの? 上から何番目の役職? ま、どうでもいいけど。 また、この人もおじさんだし。 ちょうど、お父さんと同世代くらい。 四十代半ばくらいかな。 私は、また、おばあさんに断ってもらう。 管弦の宴でしょ? 音楽を聴かせてよ。 琴を弾かせてよ。 そんなことを思ってると、今度は今までとは違い、随分若い男性がやってきた。 私より少し年上? 二十代半ばくらいに見える。 っていうか、かっこいい…… いや、もちろん、正輝さんには全く遠く及ばないんだけどね。 「民部省主計寮(みんぶしょうしゅけいりょう)出仕(しゅっし)しております、  藤原 鎌足(ふじわらのかまたり)が次男、不比等(ふひと)と申します」 藤原鎌足! 知ってる! 大化の改新の人!! 超有名人じゃない。 「私には、皆さまのように誇れる役職は  ございませんが、かぐや姫をお幸せに  すべく、生涯を懸けて慈しんでいきたいと  思っております。どうか、私の妻になって  いただけませんでしょうか?」 涼やかな目元にそこはかとない色気を感じる。 この人、モテるだろうなぁ。 なんで噂なんかに惑わされてるんだろう。 もっとちゃんとしたお姫さまのところへ行けばいいのに。 ……ああ、そうか! この人、肩書きがないんだ。 藤原鎌足の子って言ってたもんね。 今の大王から見たら、中大兄皇子に繋がる人は、敵の近江方の人なんだ。 偉そうに肩書きをちらつかせて寄ってくるおじさんたちよりは、よほど好感が持てる。 でも、大好きな正輝さんとは比べようもない。 だから、この人もおばあさんに断ってもらった。
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