管弦の宴

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 結局、私は、宴の後半は、断り続けて終わった。 何なのよ、全く。 どんなにお洒落なジャズバーだって、ナンパ男だらけだったら、行く気なくすよね? もう、こりごり。 1人で、琴を弾いてる方がましだわ。  けれど、翌朝、おじいさんは言った。 「お姫さま、昨日の方々ん中で、一番お気に  召したのは、どなたやったかね」 は? 「いえ、別にどなたも……」 お気に召すも何も、結婚するつもりないし。 っていうか、結婚してるし。 ……結婚しただけで終わっちゃったけど。 「お姫さまもお年頃じゃし、そろそろ、婿様を  とって、お子をなした方がええと  思うんじゃが……」 それは、普通の娘さんなら、そうかもしれないけど、私は違うの。 私には大切にしたい旦那さまがちゃんといるんだから。 「ごめんなさい。  私は、結婚できません」 「いや、しかし……  昨日のお方ん中には、それはそれは立派な  方がおいでたと思うんじゃが」 おじいさんも粘る。 「それでも、私は、結婚したくないんです」 お世話になっておきながら、申し訳ないとは思う。 だけど、これだけは、どうしても譲れない。 「ほしたら、婿をとる、うんぬんは置いといて  もういっぺん、会ってみるのはどうじゃ?  皆さま、もういっぺん、お姫さまに会いたい  って何べんも仰せじゃったし」 だって、会ったらまた、昨日みたいなことを言われるんでしょ? 「お会いしたら、相手の方に余計な期待を  させてしまうので……」 「いやいや、そんなこと、気にせんでええ。  向こうさんが期待するのは向こうさんの  勝手じゃろ。  もういっぺん、な?」 結局、私は、押し切られるようにもう一度会うことになってしまった。
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