左大臣 丹比真人島

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左大臣 丹比真人島

 その翌日、今度は、左大臣の丹比真人島(たじひのまひと)さんがやってきた。 もう、どこからどう見ても、おじさんにしか見えない。  私が生まれた時代なら、おじさんだけど、この時代では、おじいさんでしかない。だって、みんな十代で結婚して子供を産んで、四十台で既に孫がいるんだもん。  この人なら、既にひ孫がいてもおかしくない。 そんな人がよくもまぁ、二十歳の小娘に求婚なんて…… 「わしは人生最後の恋を姫としたい。  わしの全財産を姫に譲ろう。  どうか、わしの妻になってくだされ」 そんなことを言われても…… 「私は財産などいりません」 「では、何が欲しい?  姫が望むなら、何でも用意する」 えぇっ!? 欲しいものなんて…… 「じゃあ、胡椒ミル」 「なんと?」 だよね。 分かるわけないよね。 「えっと……」 そうか! スパイス用の乳鉢でいいんじゃない。 「あの、乳鉢っていう道具があるんです。  貴重な木の実をすり潰す時に使うんです」 なんで言ったらいいんだろう。 インドもヒマラヤも通じないし…… そうか! 「世界一高い山の向こうで使われてる道具  なんですけど……」 この時代、世界一高い山って言って通じるのかな…… 無理だろうなぁ。 そうだ!! 「お釈迦さまのいらっしゃる国!  お釈迦さまのいらっしゃる国で、  お釈迦さまたちが使ってらっしゃる鉢  なんですけど……」 そうよ! これなら通じるはず。 だって、仏教伝来は聖徳太子より前の時代のはずだもん。
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