左大臣 丹比真人島

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 それを聞いていた左大臣は、うーん…と唸って、俯いてしまった。 そんなに難しいこと、言った? 遣隋使とか遣唐使とか派遣できる時代だよね? そりゃあ、簡単ではないかもしれないけど、左大臣さんなら、なんとかなりそうなんだけど…… って、なんとかなっても、結婚はしないけどね。 「つまり、姫は、仏の御石(みいし)の鉢を献上せよと?」 仏の御石の鉢? 乳鉢をこの時代はそう呼ぶのかな? 献上しろなんて、そんな偉そうな言い方はしないけど…… 「まぁ、そんなような物ですね」 「しかとその望み、わしが叶えてみせますぞ。  じゃから姫、わしが仏の御石の鉢を見つけた  暁には、ぜひわしの妻になってくだされ」 左大臣は、よろよろとしながら、帰っていった。 どうしたんだろう? 来た時より、年老いたように見えるけど。 「お姫さま、今のは、あまりにも酷では……」 おばあさんが言う。 「えっ? どうして?」 「仏の御石の鉢と言えば、世界に一つしかない  たいそう珍しい品。  しかも、天竺まで行かねばならぬとは、  左大臣のあのお年では、帰って来られるか  どうか……」 ああ! そうか! 自分で取りに行こうと思ったら、あの年じゃ無理よね。 でも、あんな権力者が、自分で行くわけないわよ。 どうせ、誰かにお金を払って、取ってこいって言うに決まってる。 大丈夫よ。
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