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右大臣 阿部御主人
さらにその翌日、今度は、右大臣の阿部御主人さまがいらっしゃった。
「かぐや姫、私は、姫に恋焦がれて、夜も
眠れません。
どうか、私の妻になってください」
あーあ、またかぁ。
なんで、そんな噂は嘘だって気付かないのかなぁ。
「せっかくですが……」
私が断ろうとすると、それを遮るように右大臣さまが口を開く。
「大納言や左大臣に、何やらお願い事をされた
そうですな?
私も、姫のためなら、どんな事もする覚悟が
ございます。
なんなりとおっしゃってください」
えぇ!?
そんなことを言われても……
じゃあ……
「ミンクのコート」
おじいさんもおばあさんも、私のドレス姿をすごく気に入ってくれてる。たまには着て見せてあげたいけど、さすがにもうノースリーブのドレスは寒くて着られない。上から羽織る艶やかな毛皮のコートとかあれば、少々寒くても着られるはず。
「ミン…ク? コート?」
右大臣もやはり、狐に摘まれたようなポカンとした顔をした。
「えっと……
ミンクってなんだったかな……
ねずみ? いたち?
とにかく、とても暖かい毛皮です。
着ると、ぽかぽかとして……
そう!
まるで、たき火に当たってるように!
もし、その毛皮で作った上着があったら、
私は嬉しく思います」
うん、これはうまい例えだと思う。
たき火ならこの時代もあるもんね。
「それは、噂に聞いたことがございます」
そうなんだ!!
その割に、右大臣さまのお顔が暗いけど。
「姫さまは、私にその毛皮を持ってくるように
望まれるんですね?」
「ええ」
どうしたんだろう?
聞いたことがあるってことは、探すのもそんなに大変じゃないと思うんだけど……
まぁ、もし、持ってきたとしても、私は正輝さん以外の人の妻には、絶対になりませんけどね。
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