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「承知つかまつった。
私が命に代えても、必ず見つけて参ります」
立ち上がった右大臣さまは、ぼそっと呟きながら部屋を出て行く。
「はぁ……
火鼠の皮衣か」
火鼠の皮衣?
ミンクのことをこの時代は、火鼠って言うんだ。
初めて知った。
「火鼠の皮衣とは……
もしあるなら、
わしも一目見てみたいものじゃ」
おじいさんが言う。
おじいさんも冷え性なのかな?
「唐の国にあるっちゅう火鼠の皮衣は、
なんでも、火に入れさえすりゃあ、どんだけ
汚れておっても、燃えずにあっという間に
真っ白になるゆう摩訶不思議なもんらしい
でのう」
へ?
何、それ!?
火に入れても燃えなくて、白くなる?
汚れだけ燃えて、本体は燃えないってことでしょ?
そんなバカな物、あるわけないじゃない。
そんなありもしない物を、あの人は探しに行ったの?
見つかるわけないじゃない。
結婚はしたくないけど、ちょっと気の毒なことしちゃったかな。
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