竜の頸の珠

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 その後、御家来衆が戻ってこなくて、痺れを切らした大納言さまは、自ら、竜を探しに出掛けられたんだそうだ。 まぁ、そこでまた別の人に無理難題を押し付けなかったところは、ちょっと認めてあげてもいいかな。  でも、嫌がる船頭さんに無理やり船を出させて海に出たものの、竜の怒りに触れて、大嵐に遭い、ほうほうの体で逃げ出して帰ってきたんだそうだ。 ま、竜の怒りっていうより、たまたま大時化(おおしけ)に遭っただけだと思うけど。 大体、私は胡椒が欲しいって言っただけなのに、勘違いしたおばあさんの言うことを真に受けて、ちゃんと最後まで話を聞かずに帰った大納言さまにも問題はあるでしょ!?  で、なぜかそこへずっと帰ってこなかった御家来衆が帰ってきたんだそうだ。 それって、 俺たちに無理難題を押し付けたやつが痛い目にあったらしいから見にいこうぜ! 的なことじゃないのかしら。 ああ、やだわ、そんなの。 そうして、帰ってきた御家来衆に、 「よくぞ、竜を捕まえなかった!  あれを捕まえていたら、私もみなも竜に  殺されていたに違いない。  かぐや姫は大盗人(おおぬすびと)だ。  今回のことは、かぐや姫が我々を皆殺しに  するために無理難題を言い出したのだ」 なんて、言ってるらしい。 全く、バカも休み休み言って欲しいものだわ。 なんでわざわざ私がそんなバカなことをしなきゃいけないの。 そりゃあ、好きでもないアラフォーおじさんに求婚されて、正直、ウザいなぁとは思ったわよ。 それでも、死んで欲しいなんて思うわけないじゃない。 どういう頭してるのよ。 ……まぁ、いいわ。 もうこれで、余計な求婚もされないってことよね? それなら、それで結構。 むしろ、そういう噂がどんどん流れて、誰も求婚になんか来なければいいのよ。 私には、たとえ会えなくても、正輝さんがいるんだから。
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