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月
その後、毎日のように、陛下から文が届くようになった。
御所に咲いているのか、椿や山茶花、菊などの季節の花や色付いた紅葉などを添えて届けてくださる。
いつの時代も花は男性から女性に贈る最良のプレゼントなのかもしれないなぁ。
そういえば、私、正輝さんからお花ってもらったことない。
正輝さんに結婚を申し込まれてから結婚式まで、慌ただしかったもんなぁ。
誕生日もクリスマスもなかったから、プレゼントらしいプレゼントもなかった。
初めてのプレゼントが婚約指輪で、その次が結婚指輪。
その2つともが今、私の左手の薬指にあるのは、せめてもの救いだよね。
いつもここに、正輝さんを感じていられるんだから。
だから、この指輪がある限り私は正輝さんだけを思い続ける。
例え、どんなに素敵な人に出会ったとしても。
その日の夜、空を見上げると、綺麗な満月が昇っていた。
あの日……
正輝さんに告白された日……
綺麗な満月が水平線の上に輝いてた。
私は、あのまま幸せになるはずだったのに、なんでこうなっちゃったんだろう。
正輝さんに会いたいよぉ。
もう1年以上、会ってない。
付き合ったのは、ほんの3ヶ月。
会えない期間の方が長いのに、それでも正輝さんを忘れられないなんて……
もう、会えないのかな。
普通に考えたら、あの時代に戻るなんて無理だよね。
そろそろ諦めなきゃいけないのかもしれない。
だけど……
それでも、私は正輝さんを思って生きていきたい。
それから、私は、毎晩のように月を見上げる。正輝さんを思って。
満月は、だんだんとほっそりとしていき、月の出も深夜になり、明け方になっていく。
それでも、私は月を眺めることをやめられない。
今も未来も、月の輝きは同じで、満ち欠けも同じだと思うと、未来に繋がってるような気がして……
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