2/3

271人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 ある日、そんな私を心配したおじいさんが、言った。 「お姫さま、もう、月を眺めるのはやめんか?  いつもなんで、そんな悲しそうな顔をして  月ばかり見とる?」 「いえ、なんでもないんです」 未来にいる夫を思ってたなんて言えない。  けれど、来る日も来る日も月を眺める私に、おじいさんは、「もう月を見てはいかん」と言い始めた。 そう言われても……  その翌日には、天皇陛下から文と共にプレゼントが届いた。 なんだろう? 私は丁寧に包まれた布を開く。 ……これは!  中は、さらに二つの包みに分かれており、ひとつはガラスの勾玉(まがたま)を中心にしたガラスビーズのネックレス。もうひとつは、直径30㎝くらいの円形の銅鏡……だと思ったのに、裏は銅鏡、表の鏡面にはガラスの鏡がはめ込まれている。 これ、もしかして、あのエレベーターの!? 綺麗に削って磨いたのか、角もなければ、曇りもない。 ガラスの加工技術なんてないと思ってたのに、こんなこともできるんだ。 すごくびっくり。 でも…… 他の男性にもらったアクセサリーを付けるのって、なんかやだな。 すっごく綺麗だけど、それでもなんとなく好意も受け取ったみたいな気がして…… 私は結局、2つとももう一度包み直して、片付けてしまった。  それから私は、昼は琴を弾き、夜は月を眺めて過ごした。霜月に入り、夜の外は冷え込む。それでも、何となくあの月が正輝さんに繋がってるような気がして仕方がなかった。  これじゃ、本当のかぐや姫みたい。 私は、思わず、自嘲する。と同時に頬を滴が伝った。  私は、慌てて手の甲で頬を擦る。私がここへ来て泣いたのは初めてだった。  初めは、驚きと戸惑いで、それどころではなかった。  そのあとも、いろんな人が求婚に訪れたり、(きん)(こと)を練習したりと、気が紛れることがあったからかもしれない。  そして今、どことなく正輝さんに雰囲気が似てる陛下が気にかけてくださっている。  だから、余計に正輝さんを思い出すのかもしれない。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

271人が本棚に入れています
本棚に追加