5. ナッキュ

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 今夜のサブスク彼女は、渋谷の道玄坂にあるレストランバーで待ち合わせだ。  渋谷駅は改装後は数回しか来てなく、ちょっと迷ってしまい5分ほど遅れた。  大人な雰囲気なバーに入ると、誰かが奥の席から俺に向かって手を振っている。 「おーい。冬一郎!!こっち、こっちー!」  甲高い声で呼ぶ人物は…最も苦手とする種族(トライブ)…黒ギャルだ!  清純派とギャルの2択で「どちらでも」を選んだのを思い出す。    ギャルはギャルでも…こんなに純血種(ピュアブロッド)が現れるとは…! 「お、遅れてごめん。よく俺だってわかったね」 「来た人全員に声かけてた。3人目でやっとビンゴ!」 「アグレッシブだな。ご苦労様」   「あざまる。うち夏姫(なつき)です。夏の姫でナツキ。なつぽよって呼んで」 「えっ!……断る」…ぽよなんて呼べるか!恥ずかしい! 「マ!イミフ!拒否権ナシだし」 「夏姫ちゃんでいいじゃん。夏の姫なんて素敵な名前、親に感謝だよ」 「親がつけた名じゃないし。源氏名だし」  おい。いきなり夢を壊すな。パーギャルか? 「じゃあ、なっちゃんでどう?」 「マ?ダサし。せめてナッキュにしてよ。スポーティー感は譲れないし」  …「なつぽよ」のどこにスポーティー感が垣間見れるんだよ。 「わかった。ナッキュ、何飲む?」 「モヒート」 「え、アルコール?20歳超えてるよね?念のため」 「超えてるし。ちな、今年21歳」 「わかった。すみません…。モヒート2つ…。」 「冬一郎もモヒる?無理すんなし。」 「無理してないし。モヒート飲みたいし。」やばい…バカが感染(うつ)った。  早く帰ってくれと言わんばかりに、速攻でモヒートが届く。 「はい!KP(ケイピー)〜〜!!」 「え、KPってなに?」 「カンパイだし!バカなの?」ナッキュは目を大きく開いて驚く。 「知らないし。ナッキュ、カラコンしてる?珍しい色だな。」 「限定色のアメジストムーン!ラベンダーアッシュのガンメに合わせたし!」  ダメだ…なに言っているかさっぱりわからない。 「よく似合ってるぞ。」とりあえず「褒める」を選択する。 「それマ?うふふ!リアコしちゃうよ!」  理解できないワードを連発するが、ナッキュはよく見ると凄く可愛い。  丸く大きな目は月のように輝き、キュッとした鼻筋、形の良い唇…。    つけまつげやラメが強めのリップが、綺麗な顔立ちの邪魔をしている。  しかも地黒ではなくファンデーションで小麦色の肌を作っているようだ。  あああ、丸洗いしたい。すっぴんの方がよっぽど可愛いだろうに…。 「ジロジロ見んなし。とりマ、モヒート飲んで外いこか」 「え、店出ていいの?」 「マジメか!ダメだけど出ようよ。なんか空気悪いし」  空気が悪い原因は店の雰囲気に合っていないナッキュだし…とは言わず黙ってモヒートを飲む。 db4fff41-6388-471e-9c77-e44071811c4a
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