390人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
注文をし飲み物が運ばれ一息つく…。
人見知り疑惑ありの深雪は、自分から話をする気はないようだ。
10歳近く歳の差があるからな。仕方ない…無難な話題を振ろう。
「趣味はある?」
知りたくないが聞いてみる。
「………。」
え…?沈黙…!無視……!?
それとも趣味って10代には死語なのか?
Emotionをモジって感動するをエモいって言うように、シュミはSimulationで、とんでもなく壮大な意味があるとか…。
「……えっと、…たま」
「ん?なになに?」
「……水玉の絵を描くのが好きなんです」
おおお、趣味って通じていたか。よかった。
でも、考えた結果が水玉の絵?変な奴……。
「へえ、水彩画?」
「特にこだわりはないです。鉛筆でもクレヨンでも…スマホでも、無心になれるというか」
「面白いね。ストレス溜まりやすい方なの?」
「………。」
おい、黙るな。地雷踏んだかと思うだろ。
考えているなら「えっと…」とか繋ぎの言葉を放ってくれよ。
「多分…そうです」
…もっとテンポよく会話しようぜ。
今の10代ってみんなこんな感じなのか?
栄養が脳にいってないぞ。ちゃんと肉食べてるー?
「もしよかったら、絵見せてよ。」別に見たくないけど。
「え!恥ずかしいです!そんな!」深雪は真っ赤になって動揺する。
俺、絵って言ったよな。パンツとかおっぱいとか言ってないよな。
「まあ、恥ずかしいよな。」…別に見たくないからいいけどさ。
「あの、そこまでおっしゃるなら…」
熱望した覚えはないが、深雪はカバンからスマホを取り出し見せる素材を選ぶ。
しまった…。また沈黙が続いてしまう…。
「これです…。絵の具使って描いたんです」
5分以上の時間を費やし、深雪は渾身の作品を見せてくれる。
「へえ、上手だね。」お世辞じゃない。神は一つくらい才能与えるよな。
「え、そんな。…嬉しいです。有難うございます」深雪は初めて笑う。
「本当に綺麗な絵だよ。大学は美大とか?」
不覚にも…笑顔がそこそこ可愛いかったので優しくなる。
「専門学校なんです。絵というよりゲームクリエーターの」
「へえ!かっこいいじゃん。どんなの作っているの?」
深雪はさっきより真っ赤になって恥ずかしがる。エッチなゲーム?まさかな。
「柳さんにお願いされたら断れません…」
だからそんな望んでないってば…。
料理が運ばれてきたが、深雪はスマホを操作している。
仕方ないので先に食べ始める。
深雪は10分近くかけて、用意した動画を差し出す。
見た途端、口に入っていたパスタを吹き出しそうになり咳き込む。
深雪が見せてくれたのは、いつしかの朝陽を彷彿させる、ケモノの耳をつけた男子が踊っているゲームだった…。
最初のコメントを投稿しよう!