2. 小春ちゃん

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2. 小春ちゃん

 朝陽と解散したのは2時。サブスク彼女とのデートまで3時間ある。  引っ越し先の物件探しでもしよう。  中目黒は便利だから離れたくないが、家賃は10万円を超えるな…。  物件を調べていると約束時間になり、慌てて待ち合わせ場所に向かう。  5分前に着いたが、すでにお相手は到着しており、店員に奥の席を案内される。  席に近づくと女の子は素早く立ち上がった。 「(やなぎ)さんですか?初めまして、小春(こはる)です」 「……。」 「あ、立ち上がってしまい申し訳ございません。座ってください」 「……。」 「何か飲まれますか?ここ、フレッシュジュースが美味しいそうです」 「……。ああ、じゃあメニューを」  メニューを取る時に、小春ちゃんの手が一瞬触れた。  ぐはぁぁぁ!!  全身に電撃的なショックを受け、思わず腕を抑える。 「あっゴメンなさい。静電気ですか?」小春ちゃんはとっさに謝る。 「……大丈夫」と答えるが動揺を隠せない。  小春ちゃん……めちゃくちゃ可愛い!キー局のアナウンサーみたいだ。  ファッションも俺好み。パステルカラーのトップスにフレアスカート。  量産型と女子はディスるが、アナウンサーはモテを追求した結果の格好をしている。  いかん。調査なのに一目惚れしてどうする…。ちゃんと仕事しよう…。  メニューを見るふりをして、小春ちゃんを観察する。  髪は肩までのセミロング、両サイドを後ろでまとめており清潔感がある。  ナチュラルメイクでアイシャドーや口紅は控えめだ。自分の()せ方をわかっているようだ。  肌が綺麗で若く見えるが所作はしっかりしている…25歳くらいかな。  あ、俺に気を使ってまだ何も頼んでないじゃん。 「小春ちゃん、先に選んで。俺はとりあえずコーヒーでも頼むわ」  メニューを申し訳なさそうに受け取る小春ちゃんから、昼間は普通の仕事をしていそうな常識を感じる。  17時って中途半端な時間だったかも。昼に食った「男ウケ抜群オムライス」がまだ胃袋に残っている気がする。  小春ちゃんはフレッシュジュースを頼むそうなので、俺も思わず同じものを注文する。
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