14. マルちゃん

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 六本木ヒルズのタワー19階…。2度目のオフィス訪問だ…。  オーナーの月子さんは今日はいないようだ。なぜかホッとする。 「ご足労頂き、有難うございます」  マルちゃんは、礼儀正しく挨拶をし、打ち合わせ席に通してくれる。  フラミンゴみたいなピンクのワンピースを着ている…。よく似合っている。  小さなボードを持ってきて、男性が求める彼女のタイプを話し合い、マルちゃんは書記をする。  昔アニメで見た白いパンのような、ムチムチなマルちゃんの手…お肉が指先まで詰まっている。握っているペンが耳かきくらい細く感じる。  あまり見ると失礼だよな…。  …ピピピピッ…  突然、キッチンタイマーのような音がした。一瞬、マルちゃんから鳴っていると思った。  マルちゃんのスマホのアラームらしく「ちょっと、すみません」と席を立ち、デスクに向かう。  なんとなく目で追うと、マルちゃんはデスクの上にある大きな瓶を開け、中の何かを幾つか口に含んだ。  チョコ?いやマシュマロ?  もしかしたら、砂糖中毒(シュガーホーリック)かな?  アメリカ人に多く、一定の時間内に甘いものを摂取しなきゃ作業ができなくなるらしい…。  もちろん体に良くないし、肥満にもつながる…。  マルちゃんは何くわぬ顔で戻ってくる。  引き続き男性が求める彼女のタイプ像について話す。  俺の持論だが、ストレスが高い職業についている男性は、メールでの会話はできるだけ仕事に関係ない話題であって欲しい。  今日ご飯何食べた?とか、今何の料理しているの?というような内容がいい。俺はそこそこ自己顕示欲があるので、うまい飯食ったらその写真を撮って見せたいかも。 「メッセージだけでなく写真を撮るっていいかも」マルちゃんは賛成してくれた。 「マルちゃんは男性とメールするの?」何気なく聞いてしまった。 「メールする男性なんていないです」マルちゃんは恥ずかしそうに俯く。 「お、じゃあメル友なってよ」深い意味はないけど…。 「え、あ、はい」  恥ずかしそうに微笑むマルちゃんを見て、朝陽がかつて恋したマキちゃんを思い出す。  マキちゃんは太っているのを気にして、おかわりしたい給食を我慢したり、みんながやりたがらない、学級委員を引き受けたりしたいい子だった。  勉強ができて、言葉遣いがとても綺麗だった。あと、給食の食べ方も…。  ちょっとした気まぐれだった。 「仕事は終わったら、この辺で飯食べない?」  俺はマルちゃんを誘ってみた。
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