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ナッキュが冬一郎の育ったところが見たい…というので、水族館はやめてタクシーで茅ヶ崎サザンビーチに行く。
「サーファーがいっぱいいる!」
ビーチに着いた途端、ナッキュは驚き声を上げる。
「ああ、年中やってるぞ」
「冬一郎はやらないの?」
「やらない。泳ぐのは好きだけど」
「へえ。うち泳ぐの苦手。今度教えて」
「いいよ」と答え、ナッキュの水着姿を想像し、幸せな気持ちになる。
「実家ってどの辺?」
「そこの道路を超えてすぐだよ。もう家はないけど」
「子供の時、何やって遊んだ?」
「夏はこの辺で泳いでた。他の季節も大体ビーチにいたかな」
「家では遊ばないの?」
「親父がいたからな。外にいる方が多かった。年に数回祭りをやるから、町内会の人たちと準備したりとか。まあ、遊びに困る事はなかったけど」
「お祭り?」
「うん。町民総出で準備するんだよ。伝統のあるお祭り…。浜降祭っていうのが一番でかい。神輿担いでそのまま海にダイブするんだぞ」
「ま?!あげみざわ!」
「おう。今年、日程があったら来る?7月にやってるんだ」
「うん。ねえ、冬一郎、キスして…」
「え!ここで?」さすがに恥ずかしい。結構人いるし。
「いや?」
「い、嫌じゃないよ」ナッキュの手を引っ張って、素早くキスする。
もっと欲しいと言わんばかりに、ナッキュは上目使いで俺を見る。
「なんか飲む?ちょっと早いけど、飯食うか」
時間はいつの間にか3時くらいだ。
「確かに…。お昼も早かったし。どこ行くの?」
「近くに知り合いがやってる店があるから…」
朝陽の両親がやっているレストランだ。たまには挨拶がてら…行くか。
どうやら…俺はかなりナッキュにハマっているらしい…。
幼馴染の両親の店に行くなんて…。
朝陽の一番上の姉が経営に加わり、レストランは8年前に大きくリノベーションしている。
昔は近所の連中がいくような居酒屋だったが、今は観光客が訪れるお洒落な店だ。
テラスの2人掛けのビーチが見える席を勧められ、スパークリングワインを2つ頼む。
料理の注文をしたあたりで、店内にいた朝陽の姉が気づき声をかけてくる。
「冬一郎くん?久しぶりね」
「渚さん、ご無沙汰しています」
「ご一緒にいるのは、彼女?可愛いいわね。冬一郎くんは、弟の同級生なの」
ナッキュはペコッと挨拶をする。
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