16. 裏 - 月子オーナー

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「柳くん、カッコイイからモテるだろう?」  俺が話す前に、黒田さんが先に口を開く。 「え、モテないですよ。黒田さんこそ…」  黒田さんはモテるというより、生粋の女好きだ。  ラテン系かよ!と思うほど、目に入る女性を口説きにかかる。 「俺は、騙されてばっかりだよ。清純派はマジ怖い」 「清純派?…何かあったんですか?」 「おねだりする女っているだろ。バックが欲しいとか、靴が欲しいとか…」 「はい…。」 「おねだり女は楽なんだよ。焦らしたり、与えたりしてコントロールできる」  おい、汚い世界だな…。と思いながら頷く。 「怖いのは、求めない女…。『私は何もいらない。でも夢があるの…。そのために頑張っている。』そう言われたら気をつけた方がいいぞ」  いい女じゃん。妖怪「おねだり女」よりよっぽどマシだろ。 「わかりました…。黒田さん、求めない女に何かされたんですか?」 「柳くん、求めない女なんて…この世にいないんだよ」  自分で求めない女って言ってたじゃん。黒田さん、おかしくなったのか?  眉をしかめて、怪訝な顔をしてみる。 「失敬…。奴らは求めないスタンスで上昇志向なんだ。夢を叶えるために手を差し伸べると引きずり込まれる」 「…ビジネスに出資でもしたんですか?」  おそらく、金がなかったのは女に貢いでいたからだろう。このドアホ野郎! 「こっちは助けるつもりでいたのに…」  かつて憧れた人に裏切られたのもショックだが、くだらない事情に巻き込まれた自分の不運に萎える。 「黒田さん、今日お会いできたのは何かの縁です。騙された女でもビジネスでも…詳細教えてくださいませんか?僕も被害を受けたんです」 「柳くんが被害?あの娘を知っているの?」 「…知りませんよ。貢いでいた女性は誰ですか?弊社から黒田さんに不正なお金が渡されているはずです」  手の内を話し過ぎかもしれないが、手短に済ませたい。 「金なんて知らないよ…。ん…もしかして!」  黒田さんは、ポケットを探ってスマホを取り出した。 「柳くん、この娘に会ったことある?」  スマホの画面には、黒田さんに肩を抱かれて微笑む女性が写っている…。
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