16. 裏 - 月子オーナー

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 Crescent Moon(三日月-ミカヅキ)がまだ営業している時間なので、オフィスの階まで問題なく行けた。  マルちゃんから返信はない…。オフィスにいないのかもしれない。  突然訪れるのはビジネスマナー上、よろしくないが…胸騒ぎに忠実に動いてしまった。  女性客ばかりで恥ずかしいが、受付でマルちゃんに用事があると伝える。  確認しますのでお待ちください…と、簡易的な待合室に通される。  静かな待合室で耳を澄ますと、オフィスから月子さんの声が聞こえる。  怒っているようなトーン…。  いいタイミングではない…出直そうか…。  迷っているとドアがガチャッと開いて、マルちゃんが出てきた。  すぐにオフィスに通され、月子さんも同席する形になる…。  小春ちゃんがキャバクラで働いている事を…正直に話そう。  サブスク覆面調査隊として報告しても、おかしくはない内容だろう。  月子さんとマルちゃんに、夜の嬢として働いている小春ちゃんの写真を見せる。 「ふぁ!小春ちゃん!キャバ嬢デビュー?あんなに大人しい子だったのに!」  初めて知る情報だったようで、2人とも驚いている。 「実は、僕の昔の仕事仲間がかなりお金を費やしたそうです」  月子さんは腕を組んで考える…。 「それは、キャバ嬢として成功しているんじゃないの?」 「確かに…。でも相手がパンクするやり方は危ないかと…」 「柳さん、小春ちゃんが働いているお店、特定できました」  マルちゃんはノートパソコンを打ち合わせ席に持って来て説明する。 「え!こんな一瞬で特定できるの?」 「はい。六本木の有名キャバクラ店は限られています。内装や照明から判断すると…『KAGUYA』で間違いなさそうです。働いているキャストは皆、姫に関わる名前がついているそうです」 「あ、店での名前は『夏姫』って聞きました」  と聞いて、月子さんが反応した。 「夏を使っているの?!小春ちゃん、いい子そうに見えて結構やるわね」 「月子さん、どうします?」心配そうにマルちゃんが聞く。 「サブスク彼女は兼業可能だけど、他の仕事については申告義務があるの…。今お店に出てるなら、直接聞いちゃおう。小春ちゃん、お金に困っているのかもしれないし」  月子さんは意外な反応をする。従業員を気遣っているのか?  マルちゃんが「KAGUYA」に問い合わせている間、月子さんは朝陽に電話する。 「これから柳さんとキャバクラ行くんだけど、付き合ってくれない?」  おおお…月子さん、単に楽しんでいるのかもしれない…。
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