1. 七転び八起き

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1. 七転び八起き

 どうやら俺の場合は7年に1度らしい…。  7歳、…母親が家出。クソ親父と半年間2人暮らしをする羽目に。  14歳、…トラックに跳ねられ大怪我。3ヶ月間も入院した。  21歳、…麻雀でヤクザと金銭トラブル。危うく死にかけた。  運気が急激に下がる……いわゆる大殺界的なやつ。    そして、28歳の今、…身に覚えのない横領疑惑で解雇された。  外資系コンサルでハイリスクは百も承知だったが、こんなにあっさりクビになるとは。  月100万円近く貰っていたが、調子に乗って贅沢していたので貯金はない。  失業保険などの補償は出るまで時間がかかる。    まずはバカ高い家賃のマンションを引っ越さないと。  引っ越し代など諸経費はなんとかなるとはいえ、当面の生活費がない。  …仕方ない。  ロクでもない親友を頼るか。貸せる余裕があるのは奴しかいない。  連絡先から『くそホストげす野郎』を選択し電話をかける。 「お、冬一郎(とういちろう)!久しぶりだな」 「金貸してくれない?今なら利子付きでいいぞ」 「……お前、仕事クビになったの?」  ああ嫌だ。ホストは下手に回転がいいので先読みする。 「そんなところだ。どうする?」 「おい。人に金借りる態度かよ」  その通りだが、こっちは突然解雇されて傷ついているんだ。 「なんだよ。貸してくれないのか?」 「……まあ、いいや。金、利子なしでいいから、その代わりに仕事をお願いしたいんだけど」 「ただでは働かないぞ」 「フッ。仕事分の金は払うよ。ちょっとした調査をお願いしたいんだ」 「調査?」 「ああ、俺の太客(ふときゃく)がビジネスやってんだけど、その調査」 「危なそうだな」 「やばい商売じゃない。でも運営を改善したいって悩んでるんだ。客を装って覆面(ふくめん)調査してくれない?お前コンサルのプロだろ」 「まあな。で、どんなビジネス?」 「うーん。レンタル彼女の改革版みたいな感じ。会員制だからまずは登録して女の子に会ってみてよ」 「おい。真っ当なビジネスじゃないだろ。売春で捕まるんじゃないか?」 「大丈夫。はないから。入会用のサイト送るよ。電話で説明するよりサイト見たほうが早い。ついでにサイトの改善点も教えて欲しい。報酬含めて今週日曜の昼に会おうぜ」 「わかった。ダヴィンチに12時でいいか?」 「ああ…」  電話を切って2秒後にサイトのリンクが送られてくる。  さすが…ホスト。メールすんのが早いな。
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