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「仕方ない」
仕方ない、この言葉ほど
腐っているものはないと、私は思う。
なんでもこの言葉を口にすれば
許されてしまう世の中に、私は憤りを隠せない。
斯く言う私も、「仕方ない」この言葉を
無条件に愛してしまっている。
この言葉は、私に力をくれる。
人生を劇的に変えるだけの力を。
私は今、とある公園の
赤黒く錆びれた滑り台の天辺に、立っている。
そう頻繁に口にしては、この言葉の意味を
踏みにじるようで、遠慮していたが
今日この日ばかりは、声を大にして口にした。
「仕方ないっ!」
日は、疾うの昔に私を置いて逃げていった。
暗く寂しい中でも、私の背中を押す風だけは
どこか暖かい。
まるで私を嘲笑っているかのようだ。
私はもう一度だけ小さな声で、仕方ない、と
口にすると、赤黒く錆びれた滑り台から
身を捨てた………。
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