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宗田 超愛
霧野 夢
二人の出逢いは変わっていた。
「ここでどうぞ」
「ありがとうございます」
超愛17歳、夢15歳。絵画展を出てきた超愛は、階段で夢とすれ違った。その時夢がくしゃみをする。思わず両手で覆ったが、その手に唾が散った。困った夢はティッシュをバッグから出したいがあいにく両手が使い物にならない。
大胆にも夢はバッグを階段に落とした。当然その程度では必要な物は出てこない。片足の靴を脱ぐと、その爪先でバッグを突く。出るわけがない。その姿が超愛の中で美しい絵になった。超愛の頭の中は迷子になり始め、ただただ困っている夢を見つめる。
夢は諦めると自分の来ているワンピースの裾を摘まんだ。手を拭こうとするまさにその瞬間、我に返った超愛はその手を取った。驚いて夢が顔を上げると超愛は自分の腕を差し出した。そしてさっきの会話になる。
「ここでどうぞ」
「ありがとうございます」
夢は超愛の袖で手を拭き、バッグを拾いにっこりと笑った。そして恋が生まれた。
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