光 (Jの物語:番外編その9)-完-

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  「花。話を聞いて欲しい」 「なに?」 「ドイツに行こうと思っている」 「今度はドイツ? 構わないけど」 「花にも一緒に来て欲しいんだ」 「は?」 「もしかしたら永住することになるかもしれない。夢さんはイタリアに行く」 「それって……なに、離婚?」 「違うよ。僕たちは愛し合っているからね。でも会うことは少なくなると思う。でも互いに信じあっているからそれは問題にはならないよ」 「言っている意味が分からない」  花に渦巻いた怒りは思ってもいないほど激しいものだった。 「で、俺を父さんが引き取るってこと?」 「引き取るとかじゃないよ。母さんの方が移動が多いんだ。だから僕の方に……」 「勝手なことばかり言うなよっ! なんだよ、それ。どれだけ好きなようにしてれば気が済むんだよっ。俺を巻き込むな!」 「花。よく話し合ったの。二人で出した結論なのよ」 「そこに俺の意志は無いだろう」 「話を聞いてくれないから……」 「俺のせいかよっ! ふざけるな、何が親だよっ!」  立ち上がって椅子を蹴り上げる花に驚いた。転がった椅子が激しい音を立て、二人とも身を竦めた。 「あんたらに世話にはならない。俺はここで一人で住む」 「花、ここは……売りに出すんだ」  呆然とした顔は、自分たちの知らない花だった。 「そ。決めたことならいいよ。近くのマンションにでも暮らす。生活費だけ送ってくれればいい」 「花……」 「あんたたちは自由に暮らしてきたろ? これからも自由にすればいい」  夜、夢は心配になって花の部屋を覗いた。 「まさなりさん! 花が、花がいないの!」 「他の部屋は!?」  こんなに大声で話すなど、二人には無い。花のことだからこそだ。広い家の中を花を求めて、名を呼んで探し回る。どこにもいない…… 「まさなりさん、どこにもいないわ」  泣いて身を震わせる夢。その小さな体を抱きしめて涙を零す超愛。悲しみや寂しさに耐えられない二人……  そこに電話が入った。超愛の母、天音から。 『花がこちらに来てますよ。どうしますか?』 「行きます、これから! 探してたんです、花は無事ですか?」 『無事ですよ。でもね…… 来たらお父さんとも花ともちゃんと話をしなさいね』  二人は急いで支度をし、両親の元を訪ねた。  
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