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「――んめーっ! 熱々のラーメンはたまんねえな! インスタントだけどよう!」
瓦礫を燃料にした焚火を囲み、できあがったカップラーメンをすすりながら、思わずイノウが大声をあげる。
「バカ! もっと静かに食え! 鬼に見つかっちまうぞ!」
同じくカップを手にしたヨシカズが眉間に皺を寄せ、潜めた声でそんなイノウを嗜める。
何軒か土産物屋の廃屋を物色した俺達は、運良くも〝雷おこしラーメン〟なるご当地カップ麺を見つけることができ、まだ生きていた水道で水を汲むと、さっそく湯を沸かしていただくことにしたのだった。
無論、蓋に印字された賞味期限はとうに切れているが、この時代、そんな者を気にしているやつなんか誰もいない。
食料生産もまともにできない現在、ほとんどの者が俺達のように、過去の文明社会が残した保存食品を漁って命を繋いでいる。
中には要塞化できる城跡なんかに立て篭もり、細々と作物を栽培している比較的大勢のコミュニティなんかも存在するが、その手の連中はごくごくマイナーな珍しい例である。
もっとも、昔は誰しもが見て聞いて使っていたテレビやラジオ、電話、インターネットなどはないので、自分達の行動範囲以外が現在どうなっているのかは想像の域を出ないのであるが……。
だか、見知らぬ土地へ行ってみたい思いはある反面、大きな街のない地方に行けば保存食品漁りができない可能性もあるし、自衛隊や米軍の基地がない土地では武器の確保も怪しくなる。
俺達が護身用に持っている小銃や弾も、そうした基地の跡で見つけたり、鬼との戦闘で壊滅した部隊の残した装備品をいただいたものなのである。
そんな事情から俺達はずっとこうして、かつて東京と呼ばれていた街の中をぐるぐると渡り歩いている……。
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