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自らの胴を、ぐるりと一周するように赤い線が描かれている。
ドクドクと、同じ色の液体が線から溢れ出している。
「え……あ?」
意識が揺らめく。
コウモリの怪人であった顔が元のソレと混ざり合ったモノに変形する。
何故?
俺は今、生きているのか?
まさか、既に死
「あ〜〜も〜〜!!!!」
鰐は子供の癇癪のように声を荒げた。
それと同時に男から手を離し、リベナの元へとズカズカと歩く。
男は致命傷にしか見えない血を吹いたまま、地面に尻餅をつく。
衝撃で身体が上下に分断はされず、不思議と繋がったままで保たれていた。
「リベナっちホント空気読んでよね!」
否、もはや鰐ではなかった。
金髪ツインテールのゴスロリ。
齢は十代そこらの『ヒト』に見える少女。
鰐はそういった存在へと姿を変えていた。
「こちとら一応生殺与奪を握る身として威厳あった方がいいかなぁ〜と思って演技してんのに、色々すっ飛ばして鬼人の子を混乱させて!ショック死とかしたらどーすんの!」
先程まで超常の存在のようだった少女は地団駄を踏む。
「死ねばいいんじゃない?」
リベナは素っ気なく答える。
側から見れば、単なる年頃の女子同士の諍いのようであった。
「怒るよ!」
握り拳をリベナに向けムスッと頬を膨らませる。
「なんなんだ一体……。」
男の脳はキャパシティを超えていた。
その様を察してか、セベクはキッと不満げに振り向く。
「もう面倒だから事実だけ言うね!」
外見も言動も少女のようになった鰐。
だがその言の葉には有無を言わさぬ迫力が維持されていた。
「は、はい。」
故に反論はしない。
否、しようにも出来ない。
「『鬼』のチカラを得たアナタは欲の限りを尽くし、遂には暴走、『鬼人』となる!その末に殺鬼人のリベナに挑み敗北。致命傷を受けた!ここまではいい!?」
暴走。
敗北。
致命傷。
その辺りの情報は初めて知る。
「え?」
だが、疑問を呈する前に映像が脳内に流れ込む。
暴走し、吸血鬼と化し、人々襲う様を。
黒服の少女に飛びかかった瞬間、『在った筈のない刀』により両断された様を。
「このままだとアナタは失血死なり斬殺なりして死ぬ。だけどその前に私達『黙示録の獣』は2つの選択肢を与えるって訳。」
少し落ち着いた様子のゴスロリ少女はピースサインを男に向け、少し恥じらいが出てきたのか顔を背ける。
「選択肢……。」
己の身体から血は流れ続けている。
死が身近に迫っている事は容易に考えれた。
否、目の前の鰐が無理矢理にでも納得させてくるだろう。
「わかってるじゃない。」
だそうだ。
「そう。つまりは……
→『鬼』を手放してヒトに戻る。
→『鬼』を受け入れ『人鬼』となる。
人と鬼、どちらかを選びなさい。今や人でも鬼でもない者よ。」
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