DIE1話 血の滴る違異漢

7/7
前へ
/8ページ
次へ
 人。 「手放す?」  鬼。 「このチカラを?」  ふと両手を見下ろす。  黒い毛皮に覆われた指の数さえ人から外れた異形の手。  これまでの人生で幾度となく見てきた弱々しい人の手。  2つの手。 「チカラを……『鬼』を手放すとしたらどうなる?」  人の手を見つめる。 「そうね。殺鬼人に刻まれたその傷は無かった事にしてあげる。」 「だけどそれだけ。」 「アナタが犯した罪は消えず、残りの人生は牢屋で過ごす事になるでしょうね。」  コウモリ男となって血を啜った。  血袋達の顔は思い浮かばない。  だが、それなりの人数を手にかけた感触はある。 「……『鬼』を受け入れるなら?」  異形の手を見つめる。 「分かってるでしょ?アナタがあのまま暴走し続けたら『どう』なっていたか。」  黒き毛皮を纏い、靴からは鉤爪が飛び出し、肉は衣服を破く程に膨張した数分前までの己。  まさに怪物。  その先。  そして思い出した。  何故、暴走したのかを。  その理由を。  ならば。  ならば答えは1つだ。 「あぁ。『鬼』を受け入れるよ。『コレ』を手放すのは死ぬ事よりも受け入れ難い。」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加